会報第11号

もくじ
〜平成18年度 年次総会を開催〜
〜投稿記事〜◆役員&会員◆
 福岡販売士協会と制度改革に期待すること
 男たちの大和
 販売士の目
 閑話  = マナー =
 これからのビジネス・チャンス
 九州観光マスター検定2級を受験して
 「アイスクリームの日」
 販売士とコーチング
 「良い技術」と「必要な技術」
 福岡販売士協会への入会にあたって
現場から見た伸びる企業,衰退する企業



〜平成18年度 年次総会を開催〜
 
 5年目を迎えた今年度の年次総会が、4月15日(土)の午後、福岡商工会議所ビル内において開催されました。
 当日は、あいにくの雨の中にも拘らず来賓として長崎販売士協会の冨永会長以下、冬木・吉岡両副会長にも来福いただき、当協会側の会員31名の出席と併せ総勢34名での総会となりました。
 今次総会において特筆すべきは、回を重ねてきた成果もあってか、第一部の総会議事から第二部の講演会、第三部の懇親会に至るまで、すべての時間帯を通して皆さんが積極的に参加していただき活発なやりとりが行われたことでした。なかでも、とかく総会議事というと通り一遍の形式的な議事進行で終わり勝ちですが、今回は佐田会員の名司会のもとで通常議事を含め、今年度の特別議事であった「会則の一部変更」「個人情報保護方針の制定」「役員改選」等についても論議を尽くしていただき、また一歩前進した会合となりました。
 更に、講演会においても遠藤講師から、この場でしか聴講できないような貴重なお話を具体的な事例を挙げながら紹介していただき、聴講者からの質疑も絶えないほど熱心な雰囲気に包まれた中での集いとなりました。
 以下は、当日の模様です。
=年次総会次第= 司会:佐田会員
 第一部 総会議事 14:00〜14:30
      挨拶・報告 栗川会長
 第二部 講 演  14:45〜15:15
     “現場から見た「伸びる企業」「衰退する企業」”
        講師 遠藤 真紀 会員
 第三部 懇親会  16:00〜17:30
     来賓挨拶  長崎販売士協会 富永会長
     挨拶と乾杯 福岡販売士協会 濱村監事
     懇談・出席者紹介・スピーチ
 締めの挨拶 福岡販売士協会 石原副会長
    18:00 散会

第一部 総会議事

 今回は直前の会場変更もあって、開会が定刻の午後2時を少々過ぎてのスタートとなりましたが、特に支障もなく予定通り北九州地区から出席いただいた佐田会員の司会のもとで審議が始まりました。
 はじめに、栗川会長が挨拶に立たれ、当協会が5年目を迎えることが出来たことに対して会員各位の日頃からのご協力に感謝の意が述べられ、議事に入りました。
 各議事の報告並びに提案は栗川会長自身から配布資料に基づいて説明がなされ、審議の結果以下のとおり出席会員の皆さんの賛同を得て承認されました。
(1) まず、第1号議案の“会則変更”については
 「事務局長を置く」ことと「個人情報保護方針の制定」に関し提案がなされました。
 @ 前者については、発足5年目を迎えたのを機会にこれまで会長が兼務していた事務局に、新たに責任者として事務局長を置くことが提案され、会則第22条の変更(配布資料参照)のとおり承認されました。
 A また、後者については、原案の提案がなされましたが、小野宗利会員(監事)から一部修正提案があり審議の結果、次の修正案で承認されました。
 * 原案にある“2”の「著作権・肖像権について」の部分は、本来個人の権利に属するものであるため、「ホームページ上の公開等について」の項目表現に変え、内容も修正する(修正後の全文は配布資料参照)。
 なお、この方針の制定に伴い、「会員名簿」の扱いに関しても一部変更する(配布名簿参照)。
(2) 続いての、第2号議案の「新役員体制」については
 2年の任期満了に伴う改選案が提案され、次のとおり原案通りで承認されました。
 * 蒲池理事、冨永理事の退任と廣瀬理事、中野理事の新任に加え、顧問として、前日本販売士協会専務理事兼事務局長の山本宣尚氏が就任(配布資料参照)。
(3) 第3号議案の「17年度 活動報告及び会計報告」では
 最初に、年度中の会員数について賛助会員5社には増減がなかったものの、正会員については転勤等による退会で84名に減員になったとの報告があった後、
 @ 当該年度の全体会合として実施した「年次総会(37名出席)」「夏季研修会( 29名出席)」「夏の納涼家族パーティ(16名出席)」「新春懇談会(23名出席)」、それに当協会が当番であった「九州販売士交流会(45名出席)」についての結果報告と
 A 個別会合として実施した「役員会議」「1級販売士検定受験研究会」「流通業交流会」についても、計画通り開催した旨の報告がありました。
 ただ、受験研究会と流通業交流会については、毎回参加者が固定した少人数に限られ、運営上課題が残ったとの説明が併せてなされました。
 B また、当該年度の会計報告として「収入の部の決算額が1,087千円(予算923千円)」、同じく「支出の部が837千円(同796千円)」となった内容の説明があり、次年度への繰越金は250千円であることが報告されました。
 * 上記3号議案全体の詳細内容は配布資料参照方。
 以上の報告の後、引き続き小野監事から「会計処理は適正に行われている」旨の監査報告があり審議の結果、本議案は原案通り承認されました。
(4) 最後に第4号議案の「18年度活動計画と予算」についての提案があり、
 @ 新年度の活動計画については、全体会合は17年度の内容を踏襲することに加え、新たに春、秋の2回「流通施設見学会」を企画・追加することと、当該年度の「九州販売士交流会」は長崎販売士交流会が当番幹事として開催されることの説明がありました。
 A また、個別会合は「役員会議」については17年度同様、毎月の定例会議を第三水曜日に開催し、同時にこのなかでホームページの刷新を取り上げ詰めていくことのほか、会報発行の方針についても説明がありました。
 なお、「1級販売士検定受験研究会」については、実施要領を見直しメール等による通信学習制の形で企画するとの変更方針とともに従来の「流通交流会」は、全体会合で述べられたとおり、新年度からは「流通施設見学会」に衣替えし、本会合から全体会合に組み入れるとの説明がありました。
 C 更に、収支予算に関しては、前年度に比し「九州販売士交流会」の開催が長崎になることと併せて、正会員の純減が2名あるため収支規模が減少となり、「収入の部の予算額は919千円」同じく「支出の部は790千円」となり翌年度への「繰越金は129千円」としたい旨の提案説明がありました。
 * 上記第4号議案全体の詳細内容は、3号議案同様別途配布資料参照方。
 以上の活動計画並びに会計予算に関する4号議案についても、審議の結果出席者全員の賛同を得て承認されました。
 なお、本会報上では、議事の詳細な記述を省略(配布資料参照)させていただきましたが、当日欠席された会員の方々には、別途「総会資料一式」をお届けしますのでご覧下さるようお願いします。

第二部 講演会

 今回の講演は、当協会の会員で、中小企業診断士でもある遠藤真紀さんを講師に迎え、「現場から見た伸びる企業・衰退する企業」と題しお話をいただきました。特に、遠藤講師は九州情報大学の専任講師として、また国の外郭機構である中小企業ベンチャー総合支援センター・福岡県中小企業支援センター・福岡市創業支援室等の各登録アドバイザーやISOマネジメントシステムの審査員なども務められている関係から、諸企業の経営現場の実情に精通されており、ご講演いただいた内容は大変に興味深い具体的なお話ばかりで、聴講された皆さんからの質疑や意見が絶え間ないほどでした。
[ 講演のレジュメ(大項目のみ抜粋)]
  ・ はじめに
  ・ 倒産は減少傾向 
  ・ 九州は倒産多発エリア
  ・ 会社の経営資源とは
  ・ 中小企業はヒトがすべて
  ・ 倒産企業経営者の5つの「ない」
  ・ 倒産企業経営者の5つの「弱い」
  ・ 経営者で倒産確率を判定
  ・ 伸びる企業の具体的事例
  ・ 有力ベンチャー企業紹介
  ・ 伸びる会社の条件
  ・ 戦略と戦術の違い
  ・ おわりに
 ご講演の内容は、上記のレジュメに沿ってお話をいただきましたが、聴講者のひとりとして、あれもこれもとメモを採りながら聴かせて貰いましたが、学ばせていただいた1,2例を挙げれば、
 * そのひとつは、経営資源についてのお話です。
 かつては、企業の経営資源とは「ヒト、モノ、カネ」だと言われてきたものが、今では、より一層「ヒト」が重視される中で、新たにモノ、カネに代わって「企業風土」「情報」の3要素が経営資源といわれる時代になっていると共に、モノとかカネはその結果として後からついてくるものであると言う考え方や、更にはかってのノウハウ(Know−How)、いわゆる経営手法が重視されてきた時代から今や、ノウフウ(Know−Who)、つまり人脈力の時代になったとするお話があり、その意味することについても「誰を知っているかという人脈力(ヒューマンネットワーク)がイコール情報ソースをどれだけ持っているかという経営上の強みになるのではないか」という事例でした。
 * また、倒産した企業経営者に共通することについてのお話もありました。
 経営者には、「計画性、情報、リーダーシップ、戦略、人脈」という要素が不可欠なものであるのに対し、当該経営者の場合には殆どと言っていいほど、これらの面が欠如しているという実証的な例示をしていただきました。ひとつの例として戦略に関していえば、「戦略(如何に勝つかという考えと方針)」と「戦術(戦略に基づき具体的にどう手を打つか)」のことが解っていないために、経営者としての戦略を持っていないことが問題だとする指摘でした。このことの一例として、ポイントカードの導入でいえば、客の住所・氏名のようなものは把握して販促的な面(戦術レベル)での注力はしているものの、肝心などんな客がきているのかというような視点からのデータ収集や分析をして経営上の戦略化に繋げようという意識がみられないことだ。
 というような実際例をもとにレジュメに挙っている各項目毎に、それぞれ興味深く、しかも考えさせられるお話をいただきました。

第三部 懇親会

 懇親会の始めは、来賓として出席いただいた長崎販売士協会の富永会長から「福岡の総会は実に内容が伴った運営をされており素晴らしい。また、常に事業内容等の見直しを発展的に行っておられることについても見習いたい」との過分なご挨拶に加え、先輩協会長崎における現況についてのご紹介をいただき、お互いに今後とも力を合わせていこうと誓い合って、懇親パーティに移りました。
 パーティの冒頭では、当協会の濱村監事から「講演会で登場した経営者を例に、自分も知人の経営者のことを想いダブらせながらお話しを聴いていて、心底納得させられました」とのユーモア溢れる挨拶と乾杯の音頭で和やかに会がスタートしました。
 お互いにグラスを手に歓談がすすむなか、会の半ばには司会の佐田さんからの指名をうけた長崎の冬木・吉岡両副会長をはじめ、当協会の人たちが次々とスピーチに立たれ、それぞれに大変示唆にとんだお話や愉快な出来事を紹介される度に、皆さんから盛んな拍手が送られ、終始打ち解けた雰囲気でのパーティとなりました。
 こうして、歓談尽きることなく進んだ懇親会も予定の時間を迎え、最後は石原副会長から「人生で二度以上出会うことのできる人というのは、2万人程だと聞かされましたが、こうして幾度もお会いできる縁は非常に貴重なので、お互い大いに交流の機会を楽しみながら学び合っていけるよう、当協会活動に一層の参加とご協力を」との挨拶で、今回出席できなかった会員各位の分を含め、お互いの健勝を祈念して一本締めで散会しました。
石原 義曠  記


〜投稿記事〜◆役員&会員◆

福岡販売士協会と制度改革に期待すること

(社)日本販売士協会 前専務理事・事務局長
山本宣尚

 福岡販売士協会の皆さん、お変わりございませんか。私、本年3月末をもちまして、日本販売士協会の専務理事・事務局長を退任致しましたが、これまで、同協会会報への寄稿をはじめ、種々の事業にご協力いただきましたこと厚く御礼申し上げます。また、このたびは、本協会の顧問に委嘱されましたこと、まことに光栄に存じます。昭和41年に大学卒業後、日本商工会議所に31年間、そして、日本販売士協会に9年間と、丁度40年間勤務したことになりますが、これからは、1販売士として、販売士資格者の研鑽・交流活動を通して、何か社会のお役に立てればと思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
 福岡販売士協会が平成14年4月に誕生して、早いもので4年が経過しましたが、全国ベースで見ると、それは、10年5月の山形県酒田販売士協会発足以来4年ぶりの協会誕生であり、また、九州では4番目にできた販売士協会(現存する長崎・島原販売士協会の他、佐賀関にもあった)であります。爾来、本協会は、@ 1級販売士をメンバーとしてスタートしたこと、A 会員が県内だけでなく隣接県にまで及ぶ広域的組織であること、B 自主運営をしている(事務局を商工会議所に置かない)組織であること(他に千歳、神奈川の例あり)、C とりわけ会長宅に事務局を置いていることから、既存の協会とは異なる新しいタイプの協会として注目されております。さらに、福岡における協会の設立が、神奈川在住の登録講師の方々に大きな刺激を与えて、16年5月に神奈川販売士協会が実現することになりました。
 4年前、創立総会が行われたあとの懇親会で、北九州から参加された老販売士の方が、「かつて設立に向けて動いてみたがうまくいかなかった。この日の来るのを待ち望んでいたんだ。」と熱っぽく語っていた姿が昨日の如く思い出されます。
 そして、福岡販売士協会の発足を機に、日本販売士協会のバックアップで平成14年秋に始まった九州販売士交流会は、第1回は福岡で開催、第2回長崎、第3回福岡、そして、本年秋の第4回は長崎と、すっかり地域に定着した恒例行事となり、島原も次の開催地として名乗りをあげるなど、お蔭様で軌道に乗ってきました。この秋の交流会には、是非、私も参加したいと思っております。この交流会の対象は、各協会の会員に限らず、「販売士資格を持つ人は誰でも参加できる」という点で、他地域に例を見ない貴重な存在です。これからも交流の輪がさらに広がることを念じております。
 これまで、創立総会、交流会など福岡での会合に何度か出席して感じたことは、福岡販売士協会会員の中には、様々な分野の人材が揃っていて、プロとして専門分野での講演・講義(販売士講座を含む)ができる人(ほとんどの方は既にしている)が実に大勢おられ、人数の点でも、東京・大阪の販売士協会に決してひけをとらない、と思っております。本協会には、今後、地域の志ある販売士(1・2・3級)の受け皿としての役割を果たして、他の販売士協会の模範になっていただきたいと期待しております。そうした意味でも、今年度から、春秋に流通施設見学会を行うなど協会の事業メニューが増えるとのこと大変結構なことと存じです。
 振り返ってみますと、販売士制度は、中小小売業の人材育成を目的に、小売商(販売士)検定試験として昭和48年にスタートし、年間の受験者数は順調に増加を続けましたが、20年後にあたる平成6年度・7年度にピーク(各58,200人強)を迎えました。その後受験者数は緩やかな減少を辿っていった中で、4年毎にハンドブックの改定をするだけでなく、抜本的な制度改革の必要性が叫ばれるようになりました。そして、当初想定していなかった学生受験者の増加を受けて、3級に「接客マナー」科目が追加されるなどのニーズ対応が行われました。その後、平成15年の制度発足30周年を契機として、科目体系の抜本的見直し作業が始まり、17年の秋に3級の新しいハンドブックが発刊されたことは皆様の記憶に新しいことと思います。受験者側からの長年の要望であった3級試験の土曜日実施も、同年にようやく実現しました(さらに19年度より、2級試験は年2回実施される模様)。
 流通業を取り巻く環境が急速に変化する中で、販売士制度は、今、大きな曲がり角に立たされていると言えます。私は、販売士としての自覚を高めるとともに企業等のニーズに応えるためには、上記のような改革に止まらず、資格取得後のフォローアップを行うための更新制度(現在=5年毎に講習会出席)についても抜本的な見直しが必要だと思います。その議論を進める中から、販売士協会の新しい役割も生まれてくるのではないかと思っておりますが、皆さん如何でしょうか。
 最後に、私が9年間の日本販売士協会在職中に実施した事業の中で、前述の協会設立や交流会開催を除き、特に感慨深いものをいくつか列挙してみたいと思います。今後の協会活動のご参考になれば幸いです。(機会があればさらに詳しくレポートしたいと思います。)
平成9年―17年の特記事業
 @ 2級販売士テキスト(全15章)のポイント解説ビデオの制作・10年10月
 A 会報『販売士』の大幅刷新・増頁と第3種郵便物認可・12年1月
 B 販売士フォーラムの開催(講演会・分科会・見学会、1泊2日・浜松市)・13年11月
 C 協会単独のホームページ・・・・・14年1月
 D 業界記念日を網羅した『販売士カレンダー』の編集・発刊・14年11月
 E 30周年記念のエッセイ集発刊『買い手の言い分 売り手の思い』・16年2月


男たちの大和

顧問 1級販売士 石原 敏

 12月23日映画を見に行く。3ヶ月前、9月16日呉市の大和ミュージアムを見ていたので、あの戦艦大和がどう描かれるのか大変興味があった。全篇を通して悲しい限りの映画だと感じられた。何が悲しいのか?具体的に説明できないけれども、すべての場面にいろんな種類の感動が湧き七色の涙を催す、老若男女必見の映画である。
 私の育った時代を振り返ってみると、生まれた年に満州事変(昭和6年9月)次の年に上海事変(7年1月)小学1年生のときに日中戦争(12年7月)3年生のときに第二次世界大戦(14年9月)5年生のときに日米開戦(16年12月)と言う具合に戦時環境の中に育っている。アジアを背負って立つ軍国少年としての教育を受けて成長した。
 中学を入る頃になると戦況が悪化し大学・高専生も戦士となって学園を去らねばならず、更に中学生も勤労動員の対象となり、昭和20年に入ると私も中学2年の終了頃から佐世保海軍工廠に配属され兵器製造に従事した。(20.3.18授業停止)その年6月29日未明に米軍の空襲を受け自宅も工場も焼失してしまった。やがて公私とも混乱のうちに8月15日の終戦となったのである。
 戦後60年を経た今日、平和とか国連とか如何にも正論らしく弁じても実態は各所に覇権戦、宗教戦、エゴ戦が絶えない。わが国に於いても周辺に生起する脅威に対応する何らかの備えが必要な情況になって来ている様である。
 今年の漢字は「愛」と京都の高僧が書いたが、世界には「恕」と言うもう一つの漢字が広まるのを願いたい。
 いま、大和の涙で考える!

販売士の目

顧問 1級販売士 登録講師 大原 盡  
  
 1.はじめに
 商売繁盛の神様 稲荷大明神は、商家の神棚や百貨店屋上に祀られ、篤く信仰されています。一方、従業員は売場に出入りの際は、一礼をしている店があります。「職場を敬う」一礼は自発的ですが、型から入って、心に商いの信念を高めていくのが、望ましいと思います。
 新人教育は、精神・販売技術・健康面の指導で、売場勤務を重ねていると、接客が楽しくなり説得力も向上します。一年後、後輩に助言ができるように「鉄は赤いうちに鍛えよ」です。
 2.新人に温かい気持ちで激励しよう
 先日、如水庵原工房で買物を決めた時「有り難うございます」と言われました。対応は新人パートの方ですが店のマニュアル通りだそうで「流石に、この店は違う」と誉めてあげました。
 以前から受注時は「有り難うございます」の感謝言葉が必要だと考えていたからです。老舗の奥ゆかしさがジ〜ンと伝わります。「有り難うございます」は魔法の言葉ですから、何遍言っても良いのです。言えば言う程、本人に思わぬ良い事が起こる言葉なのです。新人は、心に描く理想の販売員になる熱意を持ち、幹部は顧客満足の為に率先垂範が大事です。
 3.人間心理を究めて、人間好きになろう
 新人を1人前にする育成は、 @ 接客1万回を目標に日々体で覚ると、お客の心情から性格・職業が判るようになります。 A 働くのは[ハタ(傍)がラク(楽)]になること。「あなたは何の為に店で働くのか?」お金でなく人を喜ばすことです。 B 「自分のことよりも思いやりが大切」です。我欲を捨て正直・謙遜・感謝の心を育て、思いやりの出来る人(教養人)になると、心が豊かになり、幸せになります。言葉に笑顔を交えての接客で心の交流を深めましょう。
 4.自然の法則に基づく生活を
 非・理・法・権・天「天網恢々疎にして漏らさず、天恵・天罰を下す」積善招福の実践を。寝る時、頭を真北に足を真南にして休むと磁気の流れで疲れがとれ寝覚めが良くなります。目が覚めたらサッと起きると勘が良くなり、日常、気づいたらサッと行うことに連動します。
 売場では立ち仕事を閉店迄続けますから、初めの頃は、足・腰が痛くなり非常に疲れます。就寝時に両足を立て膝で寝ると疲労は消えます。何事も初めは辛く、後は楽が世の常です。
 5.食事で良い運勢に変えよう
 刑務所の囚人は3〜4週間の食事で凶暴から温順に変わります。肉好きは荒々しい性格になり、円満な性格はビタミン・ミネラル含有の多菜小肉・青魚で体調が変わります。活力は健脳食(大豆・枝豆・豆腐・納豆・もやし・卵・レバー)で若返ります。怒ると肝臓を傷めます。
 笑顔は招福。ニコニコ・ハキハキ・キビキビ。生き生きした全身で福を呼び込みましょう。
 6.おわりに
 販売員は、大勢の人に接して人間学の勉強が出来る最良の場に恵まれております。長い人生には3つの坂、 @ 上り坂  A 下り坂  B 魔坂(まさか) があります。魔坂(まさか)のときどうするか? それは運勢絶頂時、傲慢になり謙虚さを失うと墜落します。又、体調不振時を知らず無理な運動をしたり、養生を誤ると落命します。平常、自己主張が強くなった時、勇み足になり、競争心を無理に起こすと交通事故に遭う危険があります。「まさか自分丈が」過信は禁物です。
 コロコロと変わり易い心は、不動の心(中心)にして、正確(心棒)な仕事をして信用される人(本質)になり、オンリーワンの自己実現(最重点)で、社会貢献されることを祈ります。
  【インターネットGOOGLE[大笹吉五郎]の検索で会報9・6号がご覧できます】



閑話  = マナー =

副会長 1級販売士 石原義曠
  
 昔から「今の若い者は」とはよく聞かされてきたものだが、それにしても今の若い人はマナーを知らな過ぎると感じているのは私だけだろうか。
 そして、また「知らないのは、教えないからだ」という言葉もきっと、この場合には当てハマルのだろう。街中や乗り物の中など近頃は、いたるところで目に余る行為に驚きさえ感じる。
 なぜ、家庭をはじめ、学校、職場などで親とか先生、上司や先輩というような大人たちが教えようとしないのだろう。無作法があれば、その時々に適切なマナーであるとか所作のあり方を教えなくてはいけないのではないかと。今に傍若無人なイヤな世の中になってしまうという気がしてならない。
 とは言うものの、そんな私も意気地がないのか教えることに躊躇することが多い。
 最近、私はこんな体験をした。新たに勤務した職場でのことであるが、ある朝、出勤途中に若い人と出逢い挨拶を交わして事務所に入ろうとした時のことである。なんと彼は何ら悪びれることもなく、私より先に入った。私は驚いた。
 そして、しばらく考えた。「いったい、これまでどんな育ち方をしてきたのだろう。これは教えてやらないと、この先可哀想だ」と。でも、こんな簡単なことさえ、いざ注意するとか、教えるとなると大変に勇気を必要としたことを忘れられない。「年長者が先に入るものだ」ということを教えるだけなのに「どう示し伝えるのが良いか」という“ためらい”と「小うるさい人だ」と想われても“イヤ”だと思ったりして。
 バーナード・ショーに次の言がある。One who can does, one who can not teaches. 「能う者は為し、能わざる者は教う」。先輩として“能わざる者”であってはならないが、せめて“教える”ことくらいは怠りたくないものである。
 翻って、販売はお客様という人を相手とする仕事でありながら、ともすると人の心を二の次にした言動や行動が目につき、気になる昨今でもある。
 販売行動の原点は、商品を通じてお客様と心をひとつにして、“お客様づくり“をすすめることだと考えるのだが。
 それ故に、販売士は、高い専門知識や技能もさることながら、真のお客様志向に立った心の持ち方、振る舞いなどしっかりとしたマナーを身に着けていることが大切だと思う。



「イネイト健康サロン 前原」をオープン

会長 1級販売士 栗川 久明
  
 私は、昨年9月より「イネイト塾・大阪教室」で月1回の研修を受けています。このたび仮認定を貰い、念願の「イネイト健康サロン 前原」を6月5日にオープンします。 
 「イネイト」とは、イネイト・インテリジェンス(先天的知能)の略です。それは、自然治癒力・生命力などとも言われます。
 あなたが毎日生きていく上で、当たり前に働いている力の事です。あなたは風邪をひいてもケガをしても、知らないうちに治ってしまいます。考えながら呼吸している訳ではなく、いつでも自然にあなたの為に、器官や臓器は働いてくれます。
 イネイト健康法とは、人が本来持っているイネイトの流れを良くする療法です。具体的には、体の不調の根本原因である頚椎のズレを見つけ、それを正しい位置に調整し、生命自体が持つイネイト(自然治癒力)を波動共鳴によって発揮させ、健康の維持と予防を図る方法です。
 イネイト健康法の実際は非常に簡単でかつ安全で、全く刺激を感じません。「こんなことで本当に変化が起こるのかな?」と思われるかもしれませんがご安心下さい。あなた自身の持つ治癒力が充分に発動されます。定期的にイネイト健康法を受けることにより健康を維持し、予防をはかることが出来ます。
 ストレス、肩こり、腰痛、関節痛、冷え性、不眠など・・・このような方はぜひお試し下さい。
「イネイト健康サロン 前原」のご紹介
   場所:〒819-1123 福岡県前原市神在1050-83
   TEL:092-324-6161(予約制)
   営業:10:00〜19:00(月曜休み)
   料金:初回3,000円、2回目以降2,000円
【イネイト健康法体験談(40歳代・女性)】
 私はヘルニアの治療ためイネイト健康サロンに通っています。最初は会社も休職しており、座るのも辛かったのですが、今では仕事も普通に出来るまでになりました。最近、主人も一緒に通っております。主人は肝臓の状態が悪かったのですが、再検査後、肝臓の値も通常の範囲に戻りました。これからも主人と通い、病気の不安のない健康な夫婦でいたいと思います。



これからのビジネス・チャンス

総務委員長兼事務局長 2級販売士 泉 亨

 和の世界が長期的な消費の、基調の一つになろうとしているとの説があります。しかもその動きの先頭に立っているのは20代の若者であると。
 にわかに信じがたい話ですが、そう感じること自体が発想の転換を必要としているのかも知れませんね。茶道、華道、書道、武道、あるいは伝統的な日本家屋、神社仏閣、京都等の伝統文化と云ったものに興味を覚える、いわば国風派とも呼ばれる人達が増加する傾向にあると云われていますが、美意識、季節感、侘び寂び、幽玄、自然観等情緒的な部分での回帰傾向が顕著に見られる中では、(和の世界)が大きなキーワードとして必然的に考えられます。
 これを食の世界で考えてみるとどうなるのでしょう。和食ブームが息の長いものとして継続され、グローバルな感覚で世界各地に静かに浸透しているとも云える状況ですね。しかし、和食ブームも時間の経過と共に変質してきているように思われます。単なる和食ではなくいわば洋風和食と云った形での、肉類も取り込んだ栄養のバランスに配慮したメニュー開発が、より息の長い和食ブームのキーワードとして考えられるようになってきています。何故なら、長寿者ほど肉や魚などの動物性タンパク質や牛乳、油脂類を摂っていると云った研究結果が報告されているからです。均衡のとれた食生活が日本を世界一の長寿国に位置付けた。他に理由はあるでしょうけどそれが事実だと思われます。
 消費者のニーズを掴むことの大切さは、人口減の社会を迎え、消費者減の社会を迎えた小売業にとって自明の理です。まさにワン・トゥ・ワン・マーケティングの世界ですね。いずれにしても、和の文化、和の社会への対応如何が、商売の興廃に大きな影響を及ぼしそうです。
 視点を変えてみます。和の世界への回帰の問題同様、いやそれ以上に大きなトレンドとして、少子高齢化の問題があります。高齢化と云えばアンチ・エイジングが話題となっていますが現状では美容の世界、エステの世界、医療の世界が中心であり、食の世界では未だこれと云った動きは見られません。せいぜいサプリメントや健康食品が話題となっているに過ぎません。見た目の若さを保つだけでなく、内臓や血管の若さを保ち内面からの若さを訴求する食の世界が、これから注目をあびることは衆目の一致するところでしょう。若さを保ち活き活きとして生活したいと思うのは、誰もが望んでいることでしょう。そのことからもアンチ・エイジングは重要なビジネス・テーマの一つと云えます。
 また小子化に目を向けて見ると、定住人口の減少による地域の不活性化が念頭に浮かびます。今、日本では小泉第二次内閣において、ビジット・ジャパンと云うキャッチ・フレーズのもと、観光立国を目指しています。つまり定住人口が減少するなら、それに変わる交流人口(観光客)の増加を図ろうと云うものです。そこで見えてくるのは観光産業全般の対応力の問題です。一口に観光産業と云っても、その切り口は色々とあります。時流に対する対応の仕方もまた然りです。
 そこで食の問題を1つの切り口として見てみると、最近、地産地消あるいは食のブランド化と云った傾向が強くなって来ています。地域の特徴、特性を生かしたブランド化は観光面で有効な手段と思われます。また、地産地消も評判になり、その地を訪れなければ手にすることが出来ない、口にすることが出来ないとなれば観光の重要なポイントとなり得ます。色々と、食の世界に限定してビジネス・チャンスを考えてみましたが、販売士の皆さんそれぞれが得意とする分野で、あるいは興味を覚える分野で、何がどのように変化しているのか、どのようなビジネス・チャンスが期待出来るのかを考えてみるための試金石になれば幸いに思います。


九州観光マスター検定2級を受験して

企画委員長 1級販売士 渡辺 芳雄

 昨年10月30日に第1回目の3級試験があり、マスコミにも取り上げられ話題となりました。これには幸いにしてラクラク合格しました。  そして本年3月12日に2級として初めての試験がありました。初回の3級が合格率90%超ということで、易しすぎて、正直もの足りませんでした。2級は一体どの程度の難易度か気がかりでした。
 受験当日、全34問中、最初の第1問(運営主体ともっとも関係の深いホームページ名を選択)がいきなり難問でしたので、これは余程気を引き締めて取り組まねばと思いました。つまり3級とは全然違って、いい加減なイメージ的な理解ではダメで、本質的な理解や具体的な数値など緻密さがないと合格できないぞと気付いたのです。制限120分に対し、見直しを含めて90分程で解答し、商工会議所3階の大部屋をあとにしました。
 その結果が4月27日に郵送で届き、なんとか79点ということで合格。退室後の自己採点とほぼ同じでホッとしました。
 次に私と「旅」との関係について触れます。
 私は団塊世代の第一走者で東京の下町(北千住)の出身ですが、中学2年の夏休みでのキャンプ(裏磐梯山と五色沼)がキッカケで、大自然と接することが好きになりました。その後、高校、大学時代(1960〜1970年)は、当時まだまだ蒸気機関車(SL)が全国の第一線で活躍しておる頃で、その写真を撮ることが趣味となり、全国行脚しました。当時の国鉄は全線で20千km強あったと思いますが、その6割の12千km(ちょうど地球の直径に相当)を乗りつぶしました。「時刻表」は今でも私の愛読書です。沖縄(当時は米国の統治下で鉄道もありません)を除いて、いつの間にか46都道府県の全てで、必ずどこかの駅で乗り降りしたことになっていました。
 その行動パターンは今も変わらず、機会があれば全国の主要な観光地を巡ったり、登山に出かけて行ったり、いろいろな人との出会いを楽しみにして来ました。又最初に就職したのが航空会社で、ちょうど第一次オイルショック(1973年)の頃、私は海外実習生として、当時の西ドイツ、フランクフルトに1年半程おりました。休日などを利用し中古のかぶと虫(ケーファー)でアウトバーンを使ってよくドライブもしました。その後のヨーロッパ旅行を含めると、12カ国60都市を旅しました。
 そんなこんなで私の人生にとって「旅」は欠かせないものとなっており、「観光」という言葉は大変身近な存在と言えます。
 さて、話を戻しますが、最初に「九州観光マスター検定試験」の存在を知ったのは、福岡販売士協会の個別会合のひとつである「流通業交流会」に昨年7月に、福岡商工会議所・企業研修センター森松部長がお見えになって「大店立地法」の講義をされたあと、当検定試験について触れられたのがキッカケでした。さっそく公式テキストブックを購入し準備を始めました。3級受験の頃、2級があることも知り、今回に至りました。
 2級は3級と違って、「観光コミュニケーション」として、「中国語」ないし「韓国語」のいずれかを選択すべく外国語が新規に追加されていました。九州が「東アジアのゲートウエイ」という位置づけから止むを得ないのでしょうが、万国共通語の英語も入れて欲しかったというのが本音でした。しかし、私にとって無知に等しい「中国語」を学ぶキッカケになったのは確かですし、語学の幅を広げるのに役立ちました。やはり「プラス思考」が大切のようです。(3級テキストにも書かれていました)
 もうひとつ3級と違うのは「プロモーション戦略」の中に、ITを活用した内容が大きく盛り込まれたことです。PCリテラシーに弱い私にとっては、やはり苦戦を強いられました。
 受験にあたっては、直前の3ヶ月間、主に土・日を利用してテキストブックを計3回読みました。1回目は何が書かれているか全体をさらっと、2回目はじっくり精読方式で、3回目は不得意分野の補強を中心に、と。結果として合格できたものの、「マーケティング」や「プロモーション」は巾広で奥が深く、充分には理解できていなかったことが、結果の点数内訳でも確認できました。
 最後に今後については、1級検定があればやはりチャレンジしてみたいと思っています。当面は、未だ行ったことのない九州の観光資源(リストアップされている全282個所中、未訪問99個所あり)を訪ねてみたいと思っています。これまでややもすればただボケッと見ていた嫌いがありますが、これからは観光マスターらしい目線と、さらに感性を磨き五感をフルに活かして楽しくゆとりを持って巡り歩き、人生を豊かにして行きたいと思っています。



「アイスクリームの日」

企画副委員長 2級販売士 岡野卓也

 5月9日は「アイスクリームの日」です。
「アイスクリームの日」とは、1869年(明治2年)5月9日、横浜馬車道通りで、町田房蔵が日本で最初のアイスクリームと言われている「あいすくりん」を製造販売した日を記念し制定されました。この日をアイスクリーム業界は年に一度の記念日とし色々なイベント、催しを行っております。
 私の勤務する、B−Rサーティワンアイスクリーム株式会社では2002年より5月9日の「アイスクリームの日」のチャリティーイベントとして「Free Scoop Night」を実施いてまいりました。
 「Free Scoop Night」とは全国のサーティワンアイスクリームストアにて夕方2時間の間に来店され、「ユニセフ募金」に参加頂いたお客様にもれなく、アイスクリーム1個を無料にてプレゼントするというイベントです。今年で5回目となるイベントとですが、年々お客様に支持されるイベントととなりお客様の募金額は初回の金額に対し昨年は約11倍となるまで増えております。もちろん店舗の数が増えている事もありますが、社会貢献しながら体験できる事で満足されるお客様が増えている事が大きな要因と考えております。
 サーティワンでは、「ユニセフ(国際児童基金)への寄付」について、今年の支援内容は、「より支援を必要としている子供たち」を支援するためアフリカのブルキナファソの教育支援プログラムを支援しております。教育施設の建設、学用品の提供、施設内への井戸、トイレ、手洗い場の設置、教師の育成、女子が教育を受けることへの啓蒙活動などに寄付金を役立てて行きます。 皆様も一度体験してみて下さい。1店舗平均1,000人近い行列となりますが、並ぶみなさんの表情は楽しさにあふれた笑顔でいっぱいです。
 話は変わりますが、今年は企画副委員長として商業施設の見学会を企画して行きます。近年の流通業界は大きく変わってきております。郊外に新規の商業施設が出来ると周辺の商業環境が大きく変化し、商店街への影響は大きく、閉店する商店がふえる傾向が見られます。これらの状況をしっかり体験し今後の商売のあり方について勉強して行きたいと考えております。積極的に参加下さいますようお願い申し上げます。年に2回企画致します。楽しみにご期待下さい。
 又、遊びの企画も検討中です。ゴルフコンペ、釣り大会、等など・・・! 何か希望がありましたら遠慮なく提案して下さい。楽しい企画を考えます。
福岡販売士協会は皆様方が積極的に参加することで成り立っています。誰かがやってくれるではつまらないと思います。行事には参加しましょう。


販売士とコーチング

1級販売士 堤 浩

 コーチングをご存知でしょうか。
 意識改革や組織活性化などの研修に、コーチングを導入されている企業も多いのではないのでしょうか。事実、「一時のブームが収まり、そろそろ定着してきたなぁ、という感じがしています。(中略)コーチング関連の出版物の多さや勉強会などの開催数を見ても、ほぼ一般社会に浸透してきたのではないかと思います。(企業診断2005年No6・p14、黒須靖史氏)」という専門家の意見もありますので、もう既に実施されている方も多いのではないでしょうか。
 私自身も平成17年10月に研修を受けました。(しかし上達していないと痛感しています。)
 但、コーチングは非常に良いツールです。今回、全くコーチングをご存じない方に是非ご紹介したいと寄稿いたしました。
 コーチングというと、野球やサッカーの鬼?コーチを思い浮かぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、コーチングはそれと異なります。それは指導と称して一方的にその指導者の考え伝えることが中心になりますが、コーチングは受ける側の考えが重要になります。すなわち、コーチを受ける者に、気づかせることが目的になるのです。したがって、コーチングとは、支援と訳したが適切かもしれません。
 ここで具体的に事例を紹介します。
 コーチングを入れない会話と、コーチングを取り入れた会話形式で、上司(コーチ)と部下(相談者)の設定とします。
  ●コーチングを入れない会話
   上司)今の成績じゃ、今月の目標に届かないんじゃないか。
   部下)すいません。がんばります。
   上司)それで今後の見込みはあるのかね
   部下)いえ、それが…。
   上司)おいおいどうした。困るよ、そんなことじゃ。
   部下)はい。どうもすみません。
  ●コーチングを取り入れた会話
   上司)今の成績、どう思う。
   部下)いやあ、なかなか厳しいです。目標に届かないかもしれません。
   上司)どうして。
   部下)当初の予想と状況が変ってきました。
   上司)どのように変って来たの。詳しく聞かせてくれないか。
   部下)競争相手が値下をしてきました。
   上司)それは当初から予想できなかったの。
   部下)していました。
   上司)君の予想通りだったわけだね。状況判断は適切だったことになるね。
   部下)はい。しかし競争相手の条件が、当社の採算ギリギリで…
   上司)そうか。君自身は、それについてどう思う。
   部下)これが成約できれば目標に達するので、ぜひ取り組みたいのですが…
   上司)目標達成はいいことだね。よし、私も一緒に検討してみよう。

 いかがでしょうか。コーチングでの上司(支援者)と部下(被支援者)の関係は、「パートナーシップ」の関係ということと、ご理解いただけたでしょうか。つまり、カウンセリングやコンサルティングとも、コーチングは異なるのです。
 すなわち、販売士の知識にコーチングの技術(技能)を加えることで、新しい領域にもつながる可能性を秘めていると思いませんか。 ぜひコーチングをお奨めします。


「良い技術」と「必要な技術」

1級販売士 松尾 宏一

・地上デジタル放送?
 今家電屋さんを訪れると、「アナログ放送は2011年に終了します。これからは地上デジタル放送です。」と、しきりに説明を受けます。加えて、通常(アナログしか受信できない)のテレビには「2011年アナログ放送終了」のステッカーが貼り付けられています。家に帰るとテレビ放送の中でも「地上デジタル放送、略して『地デジ』」が随所に見受けられます。
 2011年?5年後?そのテレビ、5年で買い換えることはありませんか?
 電気製品の寿命は明確な基準はありませんが、メーカーさんが修理品を在庫として抱えているのは、最終生産から5〜7年ぐらいです。ということは修理もそれ以上は受け付けられない、壊れるまで使うか、買い換える。それでなくともモデルチェンジや機能追加などで、市場の飽和状態の中、各メーカさんは常に買い替え需要を狙ってさまざまな戦略を打ってきます。皆さんご存知のとおり家電製品は、昔ほど長く使うものではなくなってきています。さらにPSE法が正常に機能すると(今はうまくいってませんし、今後どうなるか不明な点が多く残っていますが。)さらに拍車をかけることでしょう。今使っているテレビも今後5年の間に買い換える可能性が十分高いと思います。もちろんこれに当てはまらない方々もいるでしょう。しかし、今このときに本当に買い換える必要があるかを再考すべきだと思います。ひょっとしたら売り手側の「買い替え需要の掘り起こし」戦略に乗せられているかもしれません。(でも「陳腐化政策」なんてどの業界でも日常茶飯事ですが。)
・「アナログ」ハイビジョン放送という技術
 以前ハイビジョン放送について、「これからはハイビジョン放送の時代です。」意気揚揚とテストを行っていました。話は横道にそれますが、ハイビジョン放送は大画面テレビ用の放送だと思います。ちっさなテレビにはあまり必要ありません。個人によって感覚の違いはありますが、私の独断的な判断を申し上げれば、15型以下のテレビにはあまり必要ありません。逆にハイビジョンでない放送は大画面で見るとぼやけて見えます。また現状ではハイビジョン放送が多くはないので、大画面テレビは、まだ特殊な用途に偏っていると思います。たとえば「オリンピックを見る」とか「特定の番組を見る」、「ホームシアターをつくる」など。それでも大画面で見るハイビジョン放送は美しく、特筆すべきものだと思います。その映像で十分楽しむことができます。
 本題に戻りますが、テスト段階のハイビジョン放送にはクオリティの高さに驚かされました。ただこの放送を受信できる受信機、つまりテレビは当時価格が数百万円程度と非常に高価で(少なくとも私のような小市民には)簡単に購入できるものではありませんでした。それでも次世代のテレビとして購入された方もいたはずです。ところがこのテレビ、2007年以降単体ではハイビジョン放送が受信できません。ご存知かとは思いますが、このときテストで使用されていたのは「アナログ放送」で今後実用化されるのは「デジタル放送」です。つまり今までのテレビが2011年に受信できなくなるのと同様に2007年には「アナログ」ハイビジョン放送も終了します。次世代ハイビジョン放送が通常のアナログ放送より早く終了してしまうのです。皮肉なものです。技術の進歩は日進月歩で、その結果ある技術が別の技術を追い抜いてしまいました。(今回の場合、技術的な問題だけとは言い切れませんが)これから5年後どうなっているのでしょう。
・必ず地上デジタル放送が必要か?
 平成12年のIT戦略会議で、ネットワークインフラの整備において、いわゆる「ラストワンマイル問題」が取り上げられていました。国会においても各家庭に引き込むための費用を誰が負担するのか、答申が行われていたと思います。しかしながら特に都市部においてこの問題を耳にすることはなくなりました。当時は光ファイバー網の整備は困難であると思われたものが、現在各メーカの努力により(単なるシェア争い?)すさまじい勢いで整備されています。光ファイバーによるネットワークは電話回線では考えられなかった、高画質、高音質の映像情報をリアルタイムで送受信するに十分な通信スピードを提供します。また「GyaO」に代表されるインターネット放送も本格化してきました。これらの技術が5年後、テレビ放送に取って代わる可能性は十分あります。電波による放送を受信しない家庭が多くなる可能性は否定できないでしょう。実際に新聞を取らずインターネットでニュースを見る人々も確実に増えてきています。(環境にもやさしいですし。)更にCATVも広く普及してきました。電波を受信する必要がなければ今家庭でお使いのテレビに接続して使うことができます。買い換える必要はありません。(もちろんハイビジョンを映すには、その接続インターフェイスを持つハイビジョンテレビは必要ですが。)テレビは受信機でなく映像出力装置、モニターとして役割が大きくなるかもしれません。決してデジタル放送を否定しているわけではありません。デジタル放送によってさまざまな恩恵を受けることができます。移動体(自動車、鉄道など)が搭載しているテレビが安定的な画像を受信することは有線である光ファイバーでは不可能ですが、地上デジタル放送なら任意の場所で受信可能です。ただ地デジ対応テレビに買い換える必要があるか、実際にその技術が自分にとって何をもたらしてくれるのか、どのようなベネフィットがあるのか、どんな要求を満たしてくれるのか、その金額は妥当であるか、考えたほうがよいと思います。衝動買いによるフラストレーションの発散を求めているのであれば別ですが、「良いもの」と「必要なもの」には時として大きな隔たりがあることがあると言うことです。
・「すばらしい技術、最先端技術」の氾濫
 実はこのような話はビジネスでも多く実在します。システムを売り込みにお見えになる業者さんのお話を伺ってみると「すばらしい技術、最先端技術」をご紹介いただくことが多くあります。実際にその技術自体を考えれば、非常にすばらしく、ハイクオリティなシーンを容易に想像することができます。たとえば電子マネーなどは現金受け渡しのミスがなくなりますし、処理も早い。支払い時の待ち時間の低減に有効な手段です。また顧客情報の管理もきめ細かくできますし、CRMなどに非常に有効なツールであることは間違いありません。また最近では画像による顧客管理システム(顔の部分を自動的に判別し、かつ画像データベースと照合し顧客を認識したり、犯罪者や要注意人物を自動的に検知するなど。しかも少々の顔の角度の違いや、変装なども対応できるため、ついにここまできたかと感心するほど実用化段階まできています。驚きの限りです。セキュリティー関係では、虹彩、指紋、血管による個人認証システムなど、有効利用できれば大きな効果をあげることでしょう。「電子タグ」技術も今後の展開に大いに期待が持てるところです。反面このような状況はシステム会社の方には過酷だと思います。次々と新しい技術が生まれ、その中には今までの常識やインフラを覆すものも少なくありません。その熾烈な開発競争を戦い抜き、新しい技術を取り入れ、マーケットにおいては、これまた熾烈なシェア争いを勝ち抜いていかなくてはなりません。本当に大変な世界だと思います。しかも地方により、技術に対する十分な理解がない場合や投資に対する効果がない場合が多く見受けられます。(たとえばJRさんでは非接触型ICカード「Suica」が普及していますが、大都市部以外での導入は困難でしょう。)売込みにもかなりのエネルギーが必要でしょう。特殊な場合を除き、このエネルギーは当然のことながら価格に反映されます。加えて特に最先端技術になればなるほど、導入費用は割高になります。プロダクトライフサイクルにおける「開発期」にあたりますから当然であるといえます。しかも開発競争が過酷なため、成長期から成熟期すらを迎えないも、途中で放棄される技術も日常茶飯事です。ですからこのコスト高の技術を導入するにはよほどの理由や根拠が必要なはずです。ビジネスにおいて衝動買いはありえない、あってはならない選択です。「すばらしい技術、最先端技術」の夢の話から立ち戻って現実世界と照らし合わせ、1u良いもの」の中から「必要なもの」の選別をしなくてはならないのです。
・その技術使いこなせてますか?
 個人的なことですが、私がビジネスで使用している表計算ソフトは「EXCEL97」です。当分の間特に変更する予定はありません。よくできたソフトで機能的にも十分満足していますし、新しいバージョンのソフトは、さまざまな機能が追加されていますが、あまり必要性があるとはいえません。むしろ、「EXCEL97」すら未だに使いこなせていないと思っています。実はこの「使いこなす」という言葉が重要なキーワードであるといえます。新しい技術はその利用方法を習得するまでに時間が必要です。実際に使用してうまく使えるようになるまでは多少の労力が必要です。簡単に使えるようにヒューマンインターフェイスを工夫しているものも増えてきましたが、導入時には何らかの労力が必要です。そして「使える」から「使いこなす」までには更にいくつかの段階を超えなければなりません。「使いこなす」ことができるようになって初めてその技術は効果的、効率的に機能していると言えるでしょう。「使いこなす」ことができなければ、その技術はむしろオーバースペックであり、もっと安価な機能の低いもので代替できる、つまりは無駄な投資があったはずです。その技術を「使いこなす」段階になるまでには時間が経過し、必ず世の中の技術は数段階先に進んでいるのですが、使えない技術よりは「使いこなす」技術のほうが実際のビジネスにおいては、はるかに効果的で役に立ちます。その「使いこなす」技術が限界に近づくころ新しい技術を導入することができればベストでしょう。もちろんビジネスに有効な技術が開発され、すぐに乗り換える必要がある場合もあります。また同業他社などよりも先行して投資する必要がある場合もありますが、費用対効果を考えれば新しいものに飛びつくことはリスキーであることに間違いはありません。十分な検討が必要です。
・技術は所詮ツール
 さまざまな技術は所詮ビジネスツールのひとつです。単なるツールでしかないのです。ツールは何かの目的を達成することができてこそツールとしての存在意義があります。決してそのツールを使うことが目的にならないようにしなくてはなりません。加えて不用意に大きな効力のあるツールも避けるべきです。近所のコンビニにF1マシンで行くような、ばかげた使い方は気をつけなければなりません。まさに遠藤氏の講演にあった「身の丈のIT化」です。


福岡販売士協会への入会にあたって

1級販売士 中村純治

 このたび、福岡販売士協会に入会いたしました中村純治と申します。私は30年以上に渡り、家電メーカーや半導体メーカーで新商品開発や生産設備開発、生産管理に携わって来ました。「ものづくり」に喜びを感じていた一人です。そして、自分の作ったものを市場で目の当たりにしたときは嬉しいものでした。「ものを作って売る」と言うことは、作ることが出発点であり「良いものさえ作れば売れる」と言う考えを長い間持ち続けていました。
 最初は関東の家電メーカーに勤め、各種家電製品の開発に身を投じてきました。その頃は家庭内にまだまだ欲しいものが沢山ありました。カラーテレビ・自動洗濯機や乾燥機・大型冷蔵庫・エアコン・電子レンジ・ビデオなどです。しかし今は、家庭内を見回しても家電製品は充足し、多くの利便性を享受しています。「ないからほしい」と言う時代は終焉を迎えたようです。
 次は九州の半導体メーカーに勤務し、パソコンや家庭内ゲーム機の普及に貢献してきました。情報化の時代が来ることを信じひたすら走ってきました。そして、予想通りのユピキタス(いつでも、どこからでも、必要な情報にアクセスして活用できるという環境)時代がやってきました。
 今までは、物流と情報流は水が川を流れるがごとく上流から下流へと一緒に流れていたように思います。まさに川の流れ(物流)と船の流れ(情報流)が一致していたため、川の流れを意識せずに下ることが出来ました。しかし、今後は川の流れに逆らい船を漕ぐ(顧客情報の収集)必要性に迫られています。つまり充足の時代を迎えると「良いものさえ作れば売れる」と言う考えは通じなくなりました。「消費者が欲求するものしか売れない」となってきたのです。消費者ニーズは多様化し、それに即した商品の開発・供給が一段と必要になってきました。それに伴い価値連鎖やSCMの考え方がより重要となってきたわけです。
 私も、単なるエンジニアを脱皮する必要性に迫られました。開発・製造から脱皮し、物流・販売・マーケティング・サービス・組織管理・財務・経営の知識と経験を余儀なくされました。すると今までの狭い世界が徐々に広がっていくのを感じたものです。
 一昨年の早期退職を機会に、知識と経験に加えて資格の必要性を感じ、各種資格にチャレンジしてきました。そういう中で1級販売士を取得しました。私にとっては未知の分野ですが、資格を取得すると一層の興味が湧いてきます。まずは、皆さまがたとの交流を通して学んでいけることを学び、習得しなければならないことを習得し、私に出来ることから貢献していきたいと思っています。今後ともご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。


 現場から見た伸びる企業,衰退する企業

九州情報大学経営情報学部講師 遠藤真紀
(1級販売士 中小企業診断士)

 こんにちは。九州情報大学の遠藤真紀です。今年度の総会で講演させていただいた内容を,ここにまとめて寄稿いたします。
 これからお話しする内容は,データに基づきキチンと検証されたというものではなく,私が中小企業診断士として経営相談やコンサルティング業務に携わった中,つまり拙い経営指導現場から感じたことをまとめたものです。気楽にお聴きいただき,共感できる内容や皆さんの今後の活動のお役に立てる部分があれば幸いです。
 さて,最近になってようやく景気回復が新聞・TV等の情報だけでなく実感としても少しずつ感じられるようになりました。これを倒産件数で見ますと2002年がピークで,その後は減少傾向となっており,確かに景気のトレンドは上向きであることが分かります。但し,昔と違いすべての業種・業態で業績が向上しているというわけではなく,相変わらず業績が回復しない企業が多くあることも事実です。最近の傾向としては,業歴の浅い企業だけでなく創業30年以上のいわゆる老舗企業が多く倒産しています。業歴が長く,のれんや信用だけに頼る企業は衰退傾向にあることが伺えます。
 ちなみに九州は倒産多発エリアで,2004年のデータでは倒産件数1位が佐賀県。福岡県は8位で全国平均を上回っています。しかしここで注意しなければならないのは,倒産件数だけでものごとを判断してはいけないということです。販売士の方ならご存知の方も多いと思いますが,わが国の現状は,廃業率が開業率を上回っています。つまり倒産件数が多いこと自体が問題ではなく,それ以上に創業・開業が少ないことが問題なのです。革新を好まない旧態依然とした経営体質の企業は,はやく市場から撤退してもらったほうがむしろ経済の活性化に寄与します。企業の多産・多死は経済活性化の証しであり,国もかつてのような弱者救済の政策から革新企業の支援という方向転換がなされています。
 では今後,発展する企業とはどんな企業でしょう。私は企業に必要な「経営資源」の概念が以下のように変わってきているように感じます。この辺をよく分かって経営を行なう企業が,今後,発展する企業と言えるのではないでしょうか。

○20世紀(これまで)の経営資源
 ・ヒト,モノ,カネ
 ・ノウハウの時代


○21世紀(これから)の経営資源
 ・ヒト,企業風土,情報
 ・ノウフーの時代

 これまでは,ヒト(=従業員数),モノ(=資産・設備),カネ(=資本,売上)という量的指標がテーマであり,これらをいかに大きくするかというノウハウ(=経営のやり方)の良し悪しが経営発展のポイントとなっていました。しかしこれからは,ヒト(=従業員の質),企業風土(=経営理念,コンプライアンスを含む企業体質),情報(市場・顧客・社内情報等の収集能力)の良し悪しが経営発展のポイントとなり,ノウハウがなくてもノウフーつまり必要な知識・情報(たとえばノウハウなど)を提供してくれる人を知っているか,が問題となります。企業を評価する指標が,外面的な量的指標から内面的な質的指標に変わってきたと言えるでしょう。
 ところで,何を始めるにも資金は必要なのだからカネはいつの時代でも必要では?と言われるかもしれません。それはその通りなのですが,私の答えは「否」です。適切な経営がキチンとできることを“証明(説得)”できれば,結果的にカネは後からついてきます。モノ(土地などの担保能力)がなければカネを借りられない,という考え方からも脱却すべきでしょう。少しオーバーな表現ですが,今の時代,必要な資金はいくらでも銀行以外から集めることができます。孫正義氏や三木谷浩史氏を例に出すまでもなく,福岡でも名の通った経営者なら,かなりの地元企業にポケットマネーを投資しています。世の中,このような人はたくさんいます。要は,そういう人たちへどのようにアクセスするかということと,どうやって証明(説得)するかの問題です。実際には,相手を“説得”するということはかなり難しいことです。しかし逆に言えば,それを乗り越えれば資金調達への道が開かれるということにほかなりません。
 話を次に進めます。ノウハウではなくノウフーの時代とは,自分(社長等)自身にノウハウがなくても,ノウハウを含む必要な知識・情報が集められる体制と,それをキチンと評価し「戦略」として練り上げられる能力を持つ企業であれば,競争社会で最終的に勝利していくことができるということです。
 ここで少し「戦略」についてお話しましょう。教科書的にまとめると「戦略とは,環境変化に適応するための大局的・長期的な政策」という事ができます。しかしこれではよく分かりません。要は「何のために行っているのかが分かっているか」ということです。往々にして,戦略ではなく戦術のみに終始していることがよくあります。同じ事を行うにしても,それが戦略的か,戦術的かによって,後の成果に大きな差を生みます。
 たとえば,商店街などでよく行われているポイントカード。これは何のために行っているのでしょう。これを「販売促進(≒実質的な値引き)」と考えるなら,それは単なる戦術であり,それ以上の発展は見込めません。値引きですから,できればポイントは出したくない(値引きはしたくない)という心理が店側に働きます。しかし「顧客情報の収集」と考えるなら戦略的な取り組みといえます。ポイントカードの活用により顧客の属性や購買履歴を基にニーズを探り,自社の品揃えや販売方法をニーズにマッチングさせていくことが可能となります。
 ビジネス(=商売)とは,お金をかけて(コスト),より一層のお金を稼ぐ事です。戦術とは,必要なお金をいかに効率的に使うか(結果的に,できるだけお金をかけない方法を考えること)ですが,戦略とは,一番効果の上がるお金の使い方は何か(どこに,どのように投資するか)を考えることです。目先の利益(効率性)のみを考えるのが戦術,より大きな利益をどうやって生むか(例えばビジネスモデル)を考えるのが戦略です。
 ここからは究極の衰退企業つまり倒産企業の傾向についてお話しましょう。過去のデータに基づき,いつくかの特徴をキーワードにしてまとめると以下のようになると思います。

倒産企業“経営者”の5つの「ない」
 ・計画性がない(経営理念・方針や経営計画がない,タイムスケジュールが明確でない)
 ・情報がない(特に内部情報,クレーム情報が社長に伝わらない)
 ・リーダーシップがない(率先垂範できる人材がいない,ワンマンとは違います)
 ・戦略がない(小手先の戦術に終始している)
 ・人脈がない(情報収集のルートをもっていない,相談相手がいない)
倒産企業“経営者”の5つの「弱い」
 ・数字に弱い(決算書が読めない,キャッシュフローをつかんでいない)
 ・パソコンに弱い(情報収集や加工のためのツールとして活用できない)
 ・朝に弱い(夜遊びが過ぎて社長出勤→社内の風紀の乱れ)
 ・決断力が弱い(決断が遅い,情報がないので適切な決断できない)
 ・人情に弱い(情に流され他人の保証で共倒れ)


 業種・業態だけでなく企業規模や経営者の個人的気質が違えば経営のスタイルは色々と変わるでしょう。こうすれば絶対うまくいく,といようなセオリーはないかもしれません。しかし,上記に掲げる内容は概ね共感していただけることばかりではないでしょうか。
 逆にここで伸びている企業のひとつをご紹介しましょう。
 私の知る企業の中に,軍手をひとつ買うために稟議書と社長印が必要という会社があります。百数十名の従業員を擁し,立派な工場が3つもある企業です。いまどき10名以下の零細企業ならともかく,ナンセンスな話だと思われるかもしれません。しかしこの社長は従業員百数十名全員の顔と名前はおろか家族構成までも記憶されており,朝一番から各工場を回って従業員に声をかけます。このとき工場の作業工程や各従業員の健康状態を把握し,必要であれば配置換えや作業内容の変更を指示します。また,この会社には給与規定がなく,全従業員の給与は社長の一存で決められています。それでいて従業員からの不平・不満がでない。つまりワンマンではなく,適切なリーダーシップが発揮されているということです。仕事はもらうだけでなく生んでいく。自社の実態と市場全体を把握し,待ちの営業ではなく,攻めの経営を行っています。まさに戦略に基づく情報収集と意思決定の連続を行っており,伸びていくのも当たり前でしょう。
 事実は小説より奇なり,という言葉があります。伸びる企業の経営者はみな一様ではなく,「えっ! そんなこと本当にしているの」と思えるようなことを平気で行っています。しかし,それはただの破天荒ではなく,明確な戦略の下,多くの情報の中から経営者感覚によって導き出されたひとつの決断です。伸びる企業にはそれなりの理由があるということです。私自身,経営を指導するコンサルタントでありながら,経営者から多くのことを学ぶことばかりです。
 現場から見た伸びる企業・衰退する企業というテーマでお話しさせていただきました。皆様のお役に立てる情報がありましたでしょうか。ご清聴ありがとうございました。